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2016年12月22日午前に糸魚川市内で大規模な市街地火災が発生しました。日本では都市部であっても、同じように木造の密集住宅地はあり、いつでも1万坪を超える火災である「大火」が発生しないとも限らないのです。今回は火災保険の重要性を解説します。
糸魚川市の「都市大火」の原因
出火原因は「中華料理店の鍋の空焚き」という不可抗力
大きく考えさせられるのは
どんなに気をつけていたとしても、自分の家でない「鍋の空焚き」を防ぐことはできない
ということです。
自分が料理をするのであれば、いくらでも「鍋の空焚き」を防ぐ方法はあります。しかし、隣の家であっても、自分の家でない「鍋の空焚き」を防ぐ手立てというのは皆無なのです。
また、同時に糸魚川の22日の最大瞬間風速は南風で24.2メートルという強風です。
木造密集地域での飛び火による飛び火によって
- 全半焼や部分焼を含め推定で約150棟
- 被害が及んだ地域は約4万平方メートル
という大規模な火災に発展してしまったのです。最終的に消防車126台、約1000人の態勢にもかかわらずです。
これも、個人では防ぐことのできないものです。
国土交通省は「地震時等に著しく危険な密集市街地」として
- 東京都の113地区、1,683ha
- 大阪府の11地区、2,248ha
というデータを公表しています。
糸魚川市の「都市大火」は誰にでも起こりうる
そして
どんなに気をつけても、個人では防ぐことができない
ことなのです。
自分の過失が全くない状態で、家を失ったとしても1円ももえらない国
この糸魚川市の「都市大火」の直後にインターネット上に飛び交った質問というのは
「火災保険に入っていなかったら、1円も補償されないの?」
というものでした。
今回の糸魚川市の「都市大火」では
- 政府が「強風によって延焼するなど、通常の火災とは異なる点があり自然災害の「風害」としてとらえられる」と判断
- 新潟県が被災者生活再建支援制度を適用
- 被害に応じて最大400万円の支援金が支給
という形で、火災保険に加入していなくても、最大400万円の支援金が支給される可能性が高いようです。
しかし、もしこの特例がなければ
「火災保険に入っていなかったら、1円も補償されない」のです。
欧米であれば、出火を起こした人に対して損害賠償請求を起こすことができます。
これが当然のような気がしますが、残念ながら日本の場合には
失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)
という法律があります。
失火責任法は
民法第709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときは、この限りでない。
という法律です。
民法第709条は
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
という法律です。
つまり、失火責任法では
故意や重過失がある場合を除いて、失火によって他人の利益を侵害したとしても、賠償責任はない
ということになっているのです。
「鍋の空焚き」は故意でも、重過失でもないので、今回の火災では失火者には賠償責任がないのです。
近隣の方が損害賠償請求をして裁判を起こしたとしても、負けてしまいます。
そういう法律なのです。
この法律は、日本は木造家屋が多く、失火者の責任にしてしまうと損害賠償額が莫大な金額になってしまうため、それを回避すために作られた法律なのです。
火災保険に入っていなければ、自分の過失が一切なく、火災に巻き込まれ、家を失ったとしても通常は1円も補償は受けられないのです。
結局、失火責任法があるからこそ、日本人は自分の「家」という最大の財産を自分で守るために火災保険に入る必要性があるのです。
火災は気をつけていても、防げるものではない自然災害なのです。
まとめ
糸魚川市の大規模火災「都市大火」を教訓にするのであれば
- 風の強い地域
- 木造家屋
- 木造家屋の密集している地域
ほど、延焼による火災に巻き込まれるリスクは高いことになります。
また、そうでない地域であっても、火災のリスクというのは自分で防ぐことができません。
「家が焼失しても、また買えば良い」というお金持ち以外は、火災保険は入るべきものと言い切れます。
筆者自身も、10棟以上戸建てを保有していますが、すべての物件に火災保険をかけています。火災保険の保険料はそれほど高いものではありませんので、今回の大火の教訓を受けて、まだ火災保険に入っていない方は火災保険を検討することをおすすめします。